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【530件分析】教育業界のInstagram広告で今何が起きているか — "AI教育元年"のクリエイティブ最前線

更新日

2026年5月21日

広告データから読み解く、教育業界の「今」と「これから」

530件の教育業界Instagram広告を分析してわかったことがある。全体の93%が「高関与×思考型」——つまり慎重に比較検討して選ぶ商品であるにもかかわらず、業態ごとに広告の設計がまるで違う。AI関連の広告はすでに全体の9%を占め、英会話サービスの価値をAIが根本から変えている事例も出てきた。

本レポートでは、これらの広告データを独自の6ステップ・フレームワークで構造分解する。広告の見た目ではなく、その裏にある設計判断を読み解くことで、教育業界で今何が起きているのか、そして自社の事業にどう活かせるのかを考える材料を提供する。

前半では広告データから見えた3つのトレンドを、後半ではそれらすべてを説明できるフレームワークと事例の読み解きを紹介する。

本レポートのデータ概要

分析対象: 530件の教育業界Instagram広告(2025年1〜12月収集)

分析項目: 45カラム(業界分類・関与度・訴求分類・行動タイプ・デザイン要素 等)

収集方法: アナリストが目視で厳選・収集

530件のデータが映す、教育広告の今

530件の内訳を業態別に見ると、教育業界の広告がいかに多様かがわかる。

業態

件数

構成比

AI関連スクール・セミナー

47件

8.9%

学習塾・受験

45件

8.5%

語学学習・英会話

34件

6.4%

プログラミングスクール

34件

6.4%

資格取得

30件

5.7%

キャリアスクール・Webスキル

24件

4.5%

幼児教育

22件

4.2%

Webデザインスクール

19件

3.6%

その他

275件

51.9%

件数順に並べると、AI関連が最上位に来る。学習塾や英会話といった従来の主要業態と肩を並べている事実は、この市場で何が起きているかを端的に示している。

本レポートでは、この530件のデータから浮かび上がった3つのトレンドを取り上げる。

AI教育が動き出した — 広告データに見る変化の兆し

AIの本格普及は、働き方や雇用構造を変えつつある。「AIに代替されるかもしれない」という漠然とした不安は、「AIを使いこなせない人が取り残される」という具体的な危機感に変わった。この変化は、教育市場にも新たな需要を生み出している。530件中47件(9%)がAI関連の広告——学習塾や幼児教育まで含む教育業界全体の中で、ほぼ10件に1件がAIに関わる広告だ。

では、企業はAIをどう事業に取り込んでいるのか。広告データからは、3つの動きが見える。

① AIスキルを直接学ぶ市場の拡大

GUGA(生成AI活用普及協会)、SHIFT AI、DMM 生成AI CAMPなど、AIスキルそのものを教えるサービスが次々と広告を展開している。訴求も「資格取得」「副業・キャリアアップ」「時代に乗り遅れる不安」と多岐にわたる。

② 既存サービス×AI — サービスの価値が変わる

最も注目したいのが、既存の教育サービスにAIを組み込むことでサービスの強みそのものを作り変えたケースだ。

Speak — 「AI英会話」180円トライアル

Speakは「AI英会話」というポジショニングで、「人前で緊張しない」「AI相手だから何度でもやり直せる」という新しい価値を生み出した。従来の英会話の「ネイティブと話せる」という価値とは根本的に異なる。

DiaTalk — 「インド英語をAIで学ぶ」という新しい切り口

DiaTalkは「インド英語をAIで学べる」という、従来の英会話スクールでは提供しきれなかったニッチな学習体験をAI技術で実現している。

③ 新市場の兆し — 子ども向けAI教育

PLAIZ room — 子ども向けAI教育の始まり

PLAIZ roomは「小学生向けAIスクール」という、まだ市場が形成されていない領域で広告を展開している。規模は小さくても、こうした動きが出てきたこと自体が注目に値する。

この動きから何を考えるか

3つの事例は、AIの取り込み方がそれぞれ異なる。GUGAやSHIFT AIは「AIスキルそのものを教える」という新しい市場を作った。Speakは既存の英会話サービスにAIを組み込み、「緊張しない」という従来にない価値を生み出した。PLAIZ roomは、まだ市場が形成されていない子ども向けAI教育に踏み出している。

共通するのは、AIという変化を自社の事業にどう取り込むかを考え、サービスの形にして動き出している点だ。この問いはAIに限らない。社会やテクノロジーの変化を、自社のサービスにどう取り込めるか——広告データは、各企業がその問いにどう答えているかを映し出している。

SHElikesはなぜ7つの訴求を使い分けるのか

530件の中で最も多くの広告を出稿しているのがSHElikes(62件)だ。しかし注目すべきは量ではない。7つの異なる訴求タイプを使い分けている——同じサービスなのに、伝え方の切り口を7通り持っている。なぜそこまでやるのか。広告データの中身を見ていこう。

SHElikesの訴求タイプ別内訳

訴求タイプ

件数

構成比

訴求の切り口(例)

ポジティブ訴求

21件

34%

「在宅ワークが叶う」「仕事を変えよう」

体験訴求

16件

26%

「プチ体験できる」

共感訴求

8件

13%

「今の働き方にモヤモヤしているあなたへ」

インセンティブ訴求

6件

10%

「無料体験でAmazonギフトカード」

好奇心訴求

4件

6%

「数年後はAIに!?」

コト訴求

4件

6%

「毎日たった15分でいつの間にかWebデザイナーに」

機能訴求

3件

5%

「新コースがリリースしました」

SHElikesのクリエイティブ例

この戦略が意味すること

SHElikesの7つの訴求は、「デザインを何パターンか作ってみた」という話ではない。同じサービスの価値を、「ポジティブ」「体験」「共感」「インセンティブ」「好奇心」「コト」「機能」と切り口を変えて届けることで、異なる関心や動機を持つ人にリーチしている。Meta広告のAIがクリエイティブの内容からターゲティングを最適化する現在、この設計には合理性がある。

自社のサービスには、いくつの「伝え方」があるだろうか。製品やサービスの価値が一つでも、届け方は一つではない。SHElikesの事例は、訴求の多角化が広告運用の選択肢をどう広げるかを示している。

業態が変われば広告設計もまるで違う

教育業界の広告530件を業態別に見ると、「広告を見た人に次に何をしてほしいか」——この行動設計が業態ごとにまるで異なる。同じ高関与×思考型の商品なのに、なぜこれほど差が出るのか。データを見ていこう。

業態

主な行動タイプ

想定される導線

学習塾・受験

体験申込(無料)

体験授業→入塾→継続

英会話

購入(トライアル)

お試し→有料プラン

プログラミング

申込み(契約)

直接契約を狙う高ハードル設計

キャリアスクール

体験申込(無料)

無料体験→入会→継続

AIスクール

セミナー申込(無料)

無料セミナー→本講座申込

幼児教育

資料請求

資料→説明会→入会

資格取得

申込み(契約)

講座申込を直接狙う

プログラミングスクールは「申込み(契約)」を直接狙う高ハードル設計が目立つ。そしてこの業態ではネガティブ訴求が約21%を占める(全体平均は約4%)。「このままでは将来が危ない」という危機感の喚起と、高ハードルの行動設計の組み合わせ——本気度の高い層だけを選別する設計だ。

なぜ同じ業界でここまで違うのか

この差は、デザインの好みではなく、事業構造の違いから生まれている。学習塾は「まず体験してもらう→継続率で勝負する」モデルだから無料体験に誘導する。プログラミングスクールは数十万円の単価ゆえに「本気の人だけを集める」モデルで、あえてハードルを上げる。行動設計の違いは、事業モデルの違いの表れだ。

自社の広告が「とりあえず問い合わせを増やす」設計になっていないか。事業の成長にとって最適な行動設計は何か——この問いは、後半で紹介するフレームワークの核心につながっていく。

3つの違いを生む、1つの構造

なぜAI教育が広がっているのか。なぜSHElikesは7つの訴求を使い分けるのか。なぜ業態ごとに行動設計がまるで違うのか。前半で見てきたこれらの問いは、実は一つの構造で説明できる

パノプトはこの構造を「6ステップ・フレームワーク」として整理している。広告の見た目(Step 6)に至るまでに、5つの設計判断がある。

6ステップ

問い

1. 製品特性

その製品は消費者にとってどういう存在か

2. 広告目的

何のために広告を打つのか

3. 期待する行動

広告を見た人に何をしてほしいか

4. 製品価値

自社製品の強み・ベネフィットは何か

5. 広告訴求

製品価値をどんな切り口で伝えるか

6. 広告表現

訴求をビジュアルでどう表現するか

ここからは、前半で取り上げた3つの事例を、この6ステップで読み解いていく。広告の裏にある設計判断を分解することで、各企業が市場の変化をどう捉え、事業としてどう動いているのかが、より立体的に見えてくる。

事例1:Speak — 「AIなら緊張しない」という新しい価値

6ステップ

問い

Speakの場合

1. 製品特性

その製品は消費者にとってどういう存在か

高関与×思考型。英会話は「学習」という性質上、慎重に選ぶ商品

2. 広告目的

何のために広告を打つのか

トライアル購入からの年間プラン移行。「質」を意識した獲得設計

3. 期待する行動

広告を見た人に何をしてほしいか

購入(トライアル)。180円の低ハードルでまず体験させ、キャンセルしなければ自動的に年間プランへ移行する設計

4. 製品価値 ★

自社製品の強み・ベネフィットは何か

「AI相手だから緊張しない」「何度でもやり直せる」。従来の英会話にはなかった新しい価値を生み出した

5. 広告訴求

製品価値をどんな切り口で伝えるか

インセンティブ訴求(「1ヶ月限定180円」という期間限定オファー)で行動のハードルを下げつつ、「まずは試してみよう」と体験への一歩を促す

6. 広告表現

訴求をビジュアルでどう表現するか

Promo/Saleスタイル。価格を大きく表示し、「お試し」のハードルを下げるデザイン

事例2:SHElikes — 前提は同じ、伝え方を7通りに展開

6ステップ

問い

SHElikesの場合

1. 製品特性

その製品は消費者にとってどういう存在か

高関与×思考型。Webスキルスクールはキャリアに直結するため慎重に選ぶ

2. 広告目的

何のために広告を打つのか

無料体験→入会→継続。まず体験の「量」を確保する設計

3. 期待する行動

広告を見た人に何をしてほしいか

体験申込(無料)。試しやすい低ハードルの行動

4. 製品価値

自社製品の強み・ベネフィットは何か

「Webスキルを身につけて、在宅ワークやキャリアチェンジを実現できる」。27職種が学び放題という機能面よりも、その先にあるキャリア変革という成果が価値の中心

5. 広告訴求 ★

製品価値をどんな切り口で伝えるか

7つの訴求タイプで展開。同じ製品価値を、「ポジティブ」「体験」「共感」「インセンティブ」「好奇心」「コト」「機能」と異なる切り口で伝える。最多はポジティブ訴求(34%)で、明るい未来の提示が軸になっている

6. 広告表現

訴求をビジュアルでどう表現するか

Casualスタイル主体。パステルカラー、丸ゴシック体、親しみやすいデザインが多いが、好奇心訴求ではCorporateスタイル(青基調)も使い分ける

事例3:プログラミングスクール — あえてハードルを上げて「本気の人」だけを集める

6ステップ

問い

プログラミングスクールの場合

1. 製品特性

その製品は消費者にとってどういう存在か

高関与×思考型。数十万円の投資であり、キャリアを左右する選択

2. 広告目的

何のために広告を打つのか

問い合わせや契約を直接狙う。数だけ取る運用ではなく、「質」を重視した獲得設計

3. 期待する行動 ★

広告を見た人に何をしてほしいか

問い合わせ(レアテック)や申込み(Aidemy)。無料体験を挟まず、高ハードルの行動を求めることで、本気度の高い層を選別する設計が共通している

4. 製品価値

自社製品の強み・ベネフィットは何か

「本物のエンジニアスキル」「市場価値の高い人材へ」(レアテック)、「AI時代に"活かす側"になれる」(Aidemy)。即戦力を約束する価値に加え、AI時代のキャリア危機への解決策を提示している

5. 広告訴求

製品価値をどんな切り口で伝えるか

ネガティブ訴求(21%)が突出。「このままでは危ない」「奪われた側になるか」という危機感が、高ハードル行動の背中を押す

6. 広告表現

訴求をビジュアルでどう表現するか

Corporate/Professionalスタイルが多く、「真剣度」を演出

広告データは「市場変化のセンサー」である

530件の広告データを通じて、教育業界で今起きていることが見えてきた。

AIの普及は教育サービスの価値そのものを変えつつある。Speakは「AIなら緊張しない」という、従来の英会話にはなかった体験を作り出した。SHElikesは同じサービスの価値を7つの切り口で届けている。プログラミングスクールは、事業モデルに合わせて行動設計を使い分けている。

共通するのは、社会やテクノロジーの変化を自社の事業にどう取り込むかを考え、サービスの改善や新たな展開に結びつけている点だ。広告クリエイティブは、その過程で「新しい価値がユーザーに届いているか」を確かめる手段の一つである。デザインの前に、何を誰にどう届けるかの設計がある。本レポートで紹介した6ステップ・フレームワークは、その設計を構造的に捉えるための道具だ。

広告データは「市場の変化のセンサー」でもある。530件のデータに表れた変化の兆しが、自社の事業を見つめ直すきっかけになれば幸いだ。

さらに深く学びたい方へ

本記事の最後で、広告データは「市場変化のセンサー」であると書いた。530件から取り上げたAI教育の広がり、SHElikesの訴求多角化、業態別の行動設計——これらは、教育業界に起きている変化のごく一部にすぎない。

完全版資料『教育業界の 広告データが映す、8つの業界変化の兆し』では、SNS広告データと外部の市場リサーチを掛け合わせ、事業戦略に活かせる8つの市場トレンドとして整理している。本記事で取り上げたSpeakやSHElikesに加え、以下のような市場の動きを解説している。

  • AI教育元年 — Speakが「人前で緊張しない」という新しい価値で英会話の前提を書き換えた、サービス価値の再定義

  • Meta広告のAIターゲティング — 訴求の多角化が、そのままターゲティング戦略として機能する時代

  • 女性のキャリア転身市場 — 「学ぶ→転職」から「学ぶ→副業→自立」へ、出口設計の変化(Famm、HerTech、Find me!)

  • 不登校34万人と新市場 — 発達支援を切り口にした新規参入の動き(アストロノート、LITALICO、コペルプラス)

  • 少子化×学習塾倒産53件 — TOMASに見る、あえて間口を狭める高付加価値ポジション

  • AI個別最適化 — すらら、atama+が示す「先生の役割」の再設計とB2B2Cモデル

  • 教育訓練給付金 — 最大80%給付という国の後押しを組み込んだビジネス設計(RUNTEQ、デジハリ、KOTORA)

  • ハイエンド教育×SNS広告 — PROGRIT、ENGLEAD、STRAILが拓く高単価×ニッチ市場の戦い方

各トレンドには「市場で何が起きているか」のファクトと、「自社の事業に問いかける」シンプルな問いを添えている。広告データを通じて、自社の事業ドメインに潜む変化の兆しを発見するための資料だ。

完全版のPDF資料は下記よりダウンロードいただけます。

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